■ 誰の困りごとか
熊本県内の平地でハウストマトを栽培している生産者。特に、8月中旬以降に定植し、10月前後の高値時期に出荷を狙う農家。
■ どこでの困りごとか
熊本県内のトマト産地、とくに玉名・八代のような平地のハウス栽培エリア。高温期の作付けを行い、秋口の出荷を狙う現場。
■ どんな困りごとか
高温期に発生する割れや穴あき、変形トマトは、食べられるにもかかわらず、既存流通では扱いづらい。見た目が悪いだけでなく、穴や割れ目から汁が出て傷みやすく、輸送中の腐敗やカビ、梱包材の汚損、洗浄や再利用の手間まで発生するため、安くても流通に乗せにくい。さらに、こうしたトマトは短期間にまとまって発生するため、加工に回すとしても受け皿が追いつかず、結果として廃棄が集中してしまう。

課題説明

高温期の出荷構造:
熊本の平地ハウストマトは、8月15日以降に定植し、10月前後のまだ市場価格が高い時期の出荷を狙う構造になっている。ただし、その時期はまだ暑く、花が高温で焼けたり、きれいに受粉できなかったりして、変形やデベソ、穴あきなどの商品価値の低いトマトが出やすい。暖房コストを避けながら高単価期を狙う以上、この時期の出荷をずらしにくく、一定のロスは前提になっている。

流通リスクの大きさ:
割れや穴あきトマトは、単に見た目が悪いだけではない。穴が開いた部分や割れた部分から汁が出るため、そこから傷みやすくなり、夏場は特にカビも出やすい。しかも、他のトマトや梱包材、スポンジまで汚してしまうため、運んで売ることで新たな洗浄や再利用のコストが発生する。安くても買ってくれる先があったとしても、そのためにかかる時間と手間を考えると、廃棄した方が早いという判断になりやすい。

処理能力の偏り:
加工という選択肢は一見わかりやすいが、実際には短期間にまとまって大量発生することがネックになる。文字起こしでは、熊本全体で1か月弱の間に千トン規模の廃棄トマトが出る可能性があること、個別農家でも年間約20トンの生産に対し600〜800キロ程度のロスが出うることが語られている。少量ならジャム、ケチャップ、ジュースといった加工で吸収できても、短期間に集中すると既存の加工能力では受け止めきれない。

既存流通とのミスマッチ:
農協や経済連の流通は、一定の品質基準と規格を前提に動いているため、割れや穴あきは基本的に取りにくい。一般市場や物産館に持ち込む選択肢はあっても、同じ売り場に見た目のきれいなトマトが並ぶ以上、消費者はまず見た目で選ぶ。味がよくても、最初の選択で外されやすく、安売りしても動かしきれない。結果として、「売れないから捨てる」のではなく、「流通させるほどコストに見合わないから捨てる」という構造が生まれている。

田上さん プロフィール

熊本県内でハウストマトを栽培する生産者。高温期から冬場にかけてのハウス栽培に取り組み、秋口の高単価期を狙った出荷を行っている。温暖化や夜温上昇の影響、暖房費や資材費の高騰、病害虫対策コストの増加など、近年の生産環境の変化を現場で実感している。割れや穴あきトマトについても、単なる見た目の問題ではなく、流通・保管・処理まで含めた構造的な難しさとして捉えている。

インタビュー

  1. 田上さんのご状況
    ──まず、田上さんのトマト栽培は、どのようなスケジュールで進んでいくのでしょうか。

この地域は8月15日以降に定植して、実がなりだすのが10月頭ぐらいです。ちょうどその時期はまだ暑くて、花が高温で焼けたり、きれいな花が咲かなかったりして、どうしてもきれいな玉にならないことがあります。変な形になったり、デベソ状態になったり、穴が開いたようなトマトができたりして、商品価値が落ちてしまうんです。

  1. 廃棄が出る理由
    ──食べられるのに廃棄になるのは、どういうときですか。

味は基本的に問題ないんです。でも、やっぱり見た目が悪いと売りにくい。出せばある程度お金になるパターンもあるんですが、量が多すぎて採算が見合わないときは、市場に出さずに廃棄した方が早いという判断になります。食べたらおいしいんですけど、トマトは見た目で判断される食べ物なので、どうしてもそこが大きいですね。

  1. 割れ・穴あきトマトの難しさ
    ──特に扱いが難しいのは、どんなトマトでしょうか。

割れたトマトとか、穴が開いたトマトですね。穴が開いているところから汁が出るので、そこから傷みやすいし、味も落ちるし、虫がついたりもする。見た目の問題よりも、流通の途中で汁が出たり、そこからカビたりする方が、実際にはもっと大きいリスクだと思います。

  1. 流通に乗せにくい理由
    ──安くても売れればよい、というわけではないのでしょうか。

そこが難しいところです。コンテナに入れて運ぶときも、間にスポンジをかませてできるだけ衝撃を減らすんですが、割れていたら何かの拍子で汁だけになったりする。そうなると、トマトだけじゃなくて、スポンジまで洗わないといけない。二度でも三度でも同じことが起きたら、果たしてそれが見合うのか、という話になるんです。仕事が忙しいのは初期だけなので、そこに余計な手間をかけるのは厳しいですね。

  1. 加工で吸収できない理由
    ──加工品に回せばよい、という話にはなりにくいのでしょうか。

加工という話は、ジャム、ケチャップ、トマトジュースみたいにすぐ思いつくんですけど、問題は量とタイミングです。熊本全体で見ると、1か月弱の間に千トンぐらい出るんじゃないかという話もあります。うちだけでも年間20トンぐらい作って、そのうち600キロとか800キロぐらいはロスになる。少量なら吸収できても、短期間にこれだけ出ると、加工側の処理能力が追いつかないと思います。

  1. 既存流通の限界
    ──農協や既存の流通では、こうしたトマトは扱われないのでしょうか。

農協はやっぱり看板があるので、ディベソとか穴あきは取らないです。普通の市場に持っていく人はいますし、物産館とか道の駅みたいなところに出すこともあると思います。でも、同じ売り場にきれいなトマトが並んでいたら、消費者はまず見た目で選びますよね。味がどうこうの前に、最初の選択で外されやすいんです。

  1. もし解決策があるなら
    ──この課題に対して、どんな仕組みがあれば助かりますか。

本当に活用してくれる人がいて、流通経路を確立してくれるなら、一回は出してみたいです。高い時期の正規品みたいな値段じゃなくても、1万でも2万でも値段がつけば全然違う。捨てたらゼロなので。だから、二束三文でもいいから、短期間に出る量をちゃんとさばける仕組みがあるなら、ありがたいですね。