福井県坂井市三国町で三国祭りを支える各区の住民、山の制作や運営に関わる担い手、そして祭りの保存継承に関わる人たち。
■ どこでの困りごとか
福井県坂井市三国町。北前船で栄えた港町として知られ、約300年続く三国祭りの舞台となる地域。
■ どんな困りごとか
世帯数の減少により、各区が山を出すための人手と資金の確保が年々難しくなっている。山は簡単に動かせるものではなく経験者も必要だが、その担い手が減少。さらに、人形制作の中核を担う専門人材も限られており、慣習として続く輪番制や地域ルールも柔軟に見直しづらいため、祭り全体の持続可能性が揺らぎ始めている。
課題説明
三国祭りは、福井県内でも大きな祭りのひとつとして知られています。人形を載せた「山」が町を巡る独特の形式が特徴で、歴史は約300年。北前船で栄えた三国湊の繁栄とともに育まれてきた祭礼文化です。
アーバンデザインセンター坂井
一方で、その継続を支えてきた地域構造は、いま静かに限界を迎えつつあります。祭りで山を出すのは各区ですが、区ごとの世帯数には大きな差があり、20世帯ほどしかない地区も存在します。かつては豪商がいて成立していた区割りや負担のあり方が、そのまま現代まで残っているため、現在の人口規模や経済状況と噛み合わなくなっています。実際に「山を出せないならグループ内で繰り越す」という運用も発生しており、祭りの規模縮小はすでに現実のものになっています。
加えて、山は当日だけの問題ではありません。人形制作は1年、区によっては2年単位で準備が進み、材料費だけでも1基50万円規模。そこに弁当代、法被代、運営費なども重なります。町全体への補助や協賛はあるものの、そのお金が直接山を出す区の負担軽減につながるとは限らず、現場では持ち出しが発生しやすい構造になっています。
さらに深刻なのが、技術と人の継承です。人形制作の中心を担う人形師は限られており、過去には一人に依存していた時期もありました。現在は山の会や自主制作グループがノウハウを分散しようとしていますが、それでも完全な代替が容易とは言えません。山そのものを作る技術以上に、実際に山を引き、祭りを回し、地域の中で役割を担う人をどう確保するかが、最も差し迫った課題になっています。
山田 雅貴さん プロフィール
インタビュー
三国祭りとはどんな祭りなのか
──まず、三国祭りについて教えてください。
山田:
三国祭りは300年くらい続いている祭りです。三国湊は北前船で栄えた港町なので、その時代に盛り上がった文化が今も残っている形ですね。
特徴は、人形を載せた山車です。毎年5月に行われていて、人形は1年かけて作ります。祭り自体は数日ですが、準備期間はかなり長いです。
──山車は全部でどのくらいあるんですか。
山田:
全部で30数基あります。その中から毎年6基くらいが出ます。
区によって周期が違っていて、神社に近い区は3年くらいで回ってきますし、遠い区だと8年くらいの周期だったりします。
輪番制は続いているが、現状には合わなくなっている
──祭りの運営はどのように回っているんでしょうか。
山田:
基本的には輪番制です。区ごとに順番が決まっていて、その順番で山車を出します。
ただ、その仕組みが今の地域の状況に合っているかというと、かなり厳しいところがあります。
世帯数が多い区もあれば、20世帯くらいしかない区もあります。昔は豪商がいて支えられていた区もありますが、今はもうそういう状況ではありません。
──実際に山車を出せない区もあるんですか。
山田:
あります。うちの区も、コロナの関係などもあって出せない年がありました。
もし出せない場合は、同じグループの別の区に順番を回す形になります。そういう意味では、すでに調整しながら運営している状況です。
人形制作の担い手も限られている
──山車制作の面ではどんな課題がありますか。
山田:
人形制作ですね。山車の一番の見どころでもありますが、専門の人形師さんが限られています。
昔は一人の人形師さんに大きく頼っていた時期もありました。その方がいなくなったらどうするんだという話もありました。
今は山の会や自主制作グループができていて、自分たちで作る区もあります。人形師さんにお願いする区もありますが、少しずつ技術を分散させようという動きはあります。
山車は意外とお金がかかる
──費用面ではどのくらいかかるものなのでしょうか。
山田:
材料費だけでも50万円くらいかかります。
塗料や粘土生地、西陣織など、人形の装飾にはかなりお金がかかります。それに加えて、当日は人を集めたり、弁当を出したり、法被を用意したりといった費用もあります。
山車自体も古いものだと200年くらい前のものなので、壊れたら簡単に直せるものではありません。
協賛金が必ずしも山車側に回るわけではない
──祭りには協賛などもありますよね。
山田:
あります。ただ、そのお金が直接山車を出す区に回るわけではありません。
祭り全体のイベントや広場の設営などにも使われるので、山車を出す区としては実感として負担が軽くなっているわけではないです。
一番の課題は「人」
──お金や技術継承などいろいろありますが、一番の課題は何でしょうか。
山田:
やっぱり人ですね。
お金ももちろん必要なんですが、人がいないとそもそも山車が出せません。区が小さくても、人が集まればなんとかなるんですが、それが難しくなってきています。
外部の人が関わるハードル
──外部の人が祭りに関わることはありますか。
山田:
知り合いが手伝うことはありますが、全く縁のない人が入ってくることはあまりありません。
祭り自体は見に来る人が多いですが、屋台を見て帰る人がほとんどで、内側に入る機会はあまり知られていないと思います。
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